ズービキティの具現化と発展に向けて
ズービキティ(zoobiquity)は、2011年に米国カリフォルニア大学のホロウィッツ医師が提唱した概念で、ヒトと動物の病気を1つのものとして捉える考え方です。
従来、病態発症の分子機構を理解するために疾患動物モデルが多用されてきました。モデル動物から得られた知見は重要ですが、一方で、人工的なモデル動物のみでは解明できない研究課題の存在が顕在化してきています。ズービキティにおいては、このような適切な実験モデルが存在しないヒトの疾患に対して、ヒトと動物の病気を1つのものとして捉え、研究課題の解決を目指します。
例えば本研究推進体が注目するイヌのがんは、ヒトのがんと同様に自然発症し、また発症原因となる遺伝子変異の多くも共通します。ズービキティにおいては「ヒトのがん」を「動物のがん」に含めた包括的な理解を試みます。また、ヒトでは希少疾患であったり、適切な動物モデルが存在しないために、医学と獣医学の連携が特に効果的であると考えられる分野もあります。このような分野では、「ヒト」と「動物」の研究者が協同して一つの研究課題を解決する「相互通行型」の研究連携活動が重要な意味を持つと考えられます。
我々は「動物」の視点に立った獣医学の研究者として、ズービキティという概念を具現化し、さらに発展させるため、「ヒト」の視点に立った医学・薬学の研究者と協同して、一つの研究課題を解決する新たな潮流を作ることを目指しています。
本研究推進体について
近年、飼育環境の改善や獣医療の発展などにより、犬と猫(小動物)の寿命は延長し、その結果、高齢化したペットの死因の第一位は人間と同様にがん(悪性腫瘍)になりました。このような状況を受けて、小動物臨床分野ではがん先進治療の導入の必要性が高まっています。一例として山口大学動物医療センターにおいては、2016年に高出力放射線治療装置(リニアック)が導入され、今後多くの動物のがん治療への貢献が期待されています。
一方、既存の先進治療の導入に加えて、新しいがん治療法の開発も強く望まれます。我々は2016年、山口大学に本研究推進体「小動物のがんに対するトランスレーショナル研究治療ユニット」を発足させました。本研究推進体の最終目的は、山口大学に小動物のがんに関する基礎研究から臨床応用まで行える「小動物がん研究治療センター」を設立することです。本研究推進体では、基礎研究で発掘したシーズを臨床応用可能な局面までトランスレーションするシステムを構築し、それを実際に担がん動物(がんを発症した動物)へ用いる臨床試験の実施へつなげることで、新しいがん治療法の開発を目指します。また同時に、最先端のがん治療を提供できる先端治療部門の確立を目的としています。
ハイライト
01/11/2019
研究推進体の第2回シンポジウムを開催しました
1月12日に本研究推進体の第2回シンポジウムを開催しました。
研究推進体メンバー2名、ゲストとして3名の先生を迎え、様々な視点からのがん研究を話し合いました。
09/28/2018
日本癌学会でランチョンセミナー開催
比較腫瘍学の第一人者であるDr. Chand Khannaをお招きし、第77回日本癌学会学術総会で、研究推進体TRAC共催のランチョンセミナーを開催しました。当日はキャンセル待ちの方々がおられるほどで、大盛況でした。
09/08/2018
サイエンスカフェを開催しました。
9月9日に山口、9月14には東京において、クラウドファンディング支援者の方々を対象としたサイエンスカフェを開催しました。ご来場下さった皆様、ありがとうございました。
05/22/2018
新聞記事で紹介(朝日新聞)
朝日新聞さんに「イヌのがん研究費」として記事を書いて頂きました!電子版にも載っています(https://www.asahi.com/articles/ASL593HB2L59TZNB007.html)。
05/21/2018
テレビ放送で紹介(NHK)
NHK山口放送局のコーナー「情報維新!やまぐち」で研究推進体TRACの紹介をして頂きました!
舞台裏はこちら(https://twitter.com/YamaguchiU_TRAC/status/998423690135011328)です。