組織
水野 拓也(研究推進体代表者・シーズ探索部門)
全体の統括、がん免疫研究、臨床試験の統括とがん治療
研究代表者である水野がここ4年間携わっている腫瘍溶解性ウイルス(レオウイルス)を用いた犬のがん治療は、本学動物医療センターにおける約3年間の臨床試験の結果をもとに、現在他国においても大規模臨床試験を今年スタートする予定となっており、一早い製品化を目指しています。本プロジェクトは、in vitro研究、in vivo研究、安全性試験、動物医療センターに来院した担がん犬を用いた小規模臨床試験と山口大学共同獣医学部において実施してきたものであり、水野はそのようなストラテジーに精通しています。またそのほかにも、現在は犬PD-1および犬PD-L1、犬CD20に対する抗体医薬の開発、腫瘍抗原を用いたDNAワクチン、免疫細胞を用いた細胞療法など数々の臨床試験を実施計画しています。
島田 緑(シーズ探索部門)
新規がん治療法の基盤的研究
哺乳動物細胞には、異常な細胞の増殖を防ぐために「3つの腫瘍化防御機構」が備わっています。細胞にはDNA損傷やがん遺伝子活性化などに応答して
①細胞周期チェックポイントにより一旦細胞周期を停止させ、損傷したDNAを修復する機構
②異常な細胞を除去するアポトーシス
③異常な細胞の増殖を不可逆的に停止させる細胞老化誘導
の3つの機構が協調的に働くことで、腫瘍化を防ぎます。
この腫瘍化防御機構において中心的な役割を果たすChk1の機能喪失は発がんの原因となる一方で、がんの化学療法においてはChk1の機能阻害により細胞死を誘導できます。現在、Chk1による生命現象の分子基盤の解明を行うことによって、新たな抗がん剤を創出しようと試みています。
大浜 剛(シーズ探索部門)
新規がん治療法の基盤的研究
がんにおけるリン酸化酵素(キナーゼ)の異常な活性化を抑制することを目的とした分子標的抗がん剤は、現在の医療現場において不可欠な存在です。しかし、がん細胞の耐性獲得等の問題もあって新たな新薬開発が困難な状況となっています。がんでは、キナーゼの異常な活性化だけでなく、脱リン酸化酵素ホスファターゼの活性低下も起きています。大浜は、分子標的抗がん剤開発の分野に従来のキナーゼ阻害剤とは逆転の発想である「ホスファターゼを活性化する」創薬という新たな視座を提供するための研究を行っています。具体的には、重要ながん抑制因子であるProtein Phosphatase 2A(PP2A)の活性制御機構の解明や、PP2A活性を回復させる化合物の同定を行っており、PP2A活性化剤が一部のイヌがん細胞に対して抗がん効果を発揮することを明らかにしました。
堀切園 裕(腫瘍治療部門)
新規がん治療プロトコールの探索
小動物医療の現場では、犬や猫の死因のトップである悪性腫瘍を克服するために、早期診断や効果的な治療が必要とされています。悪性腫瘍の治療は外科療法、化学療法、放射線療法が主流ですが、医学領域では血管新生阻害療法(腫瘍周囲の新生血管を制御することで増殖や転移を抑制する治療法)も様々な悪性腫瘍に使用されています。現在は、犬や猫に血管新生阻害療法を臨床応用することを目的に、血管新生のメカニズムや血管新生阻害薬の作用についての研究を行っております。その他に、腫瘍組織や血液中における新規腫瘍マーカーや治療標的の探索や、外科療法、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的研究を行っております。
坂井 祐介(シーズ探索部門)
新規がん治療法の基盤的研究
主に小動物のがんの病理組織評価と組織診断に携わっています。研究テーマとして、がんにおけるユビキチン分解酵素であるUSP15の発現と役割に関する研究も行っています。ユビキチン-プロテアソーム系は生理的・病的も含め様々な細胞機能に関わる系ですが、この系の制御因子の1つであるUSP15はイヌの肝細胞癌、悪性リンパ腫、骨肉腫といった悪性腫瘍で発現が亢進していることがわかりました。しかし、USP15がこれらがんでどのような役割をになっっているのかは明らかになっていません。この機能を解析することでUSP15を標的とした新たな抗がん戦略の構築に貢献できればと思っています。
過去に在籍したメンバー
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臼井 達哉
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西川 晋平